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■飲食店に求められる楽しさ 新聞に掲載されているような様々な経済指標からは飲食業界の低迷しか見えてこないが、現実にはいつの時代にも、多くのお客を集めて繁盛している店は必ず存在している。 店舗が繁盛するためのポイントには、商品(料理)やサービス、価格、立地など様々な要素があるが、飲食店の場合、この他にも、その時代のお客のニーズを的確にとらえて、店舗デザインや客席レイアウトに反映させるという店づくりのノウハウは非常に重要である。 本来、飲食店の客席とは、お客がそこで長い時間を過ごす場所であり、店側が提案する業態コンセプトやサービスの姿勢を打ち出す中心的な要素であるはずなのだが、残念なことに、現実には経営者が飲食ビジネスを充分に理解していない店舗設計者や施工会社などにすべてを任せてしまっているというケースも決して少なくない。 しばしば、飲食店のオーナーが「ウチの店は値段も決して高くないし、サービスだってそう悪くない。料理はそこそこのレベルだし、店はまだそんなに古くない。なのにちっともお客が来ない」と嘆く声を耳にする。 しかし、考えてみて欲しい。「果たしてそんな店に魅力があるのだろうか?」 そういう経営者に「だからお客が来ないのでは?」と、問い掛けてみると、たいていは「え?」と目を丸くして考え込んでしまうのだが、この理屈が判らなければ、今の時代にお客を呼ぶことはできない。 そう、そんな店のどこに魅力があるというのだろう。不況下でリストラの危機にさらされ、給料は最低限しかもらえず、ボーナスはカットされる。そうした中で乏しい財布の中身を計算しながら外食を楽しもうという多くの人々にとって、そんな風に何もかもが「そこそこ」の「どこにでもあるような飲食店」にお金を使う気にならないのは当り前だ。 飲食店で食事をするということは、決して「腹を満たす」ことだけが目的なのではない。もし、それだけが目的ならば、スーパーで材料を調達し自宅で調理をすればはるかに安上がりだし、コンビニで弁当を買う方がずっと簡単だ。 お客が飲食店に求めているのは「外食の楽しさ」であって、ただ単に「安く便利な食事」ではないのである。 「不況で客足が伸びない」「だから価格を下げるしかない」と考える前に、あなたの店が「外食の楽しさ」を提供できている店なのかどうかを、もう一度見直してみる必要はないだろうか。 |
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■顧客マーケットの変化 わが国では、「お酒を飲む場所」としての飲食店のマーケットがかなり大きい。 それは、もちろん食文化の問題でもあるのだが、同時に、かつて「ウサギ小屋」と笑われた貧弱な住居しか持たない日本人が、生活していく上で必要な様々な「宴席」を欧米人のように自宅では行うことができず、街の飲食店に求めてきたという結果でもある。 その結果、わが国の飲食店の中ではどちらかというと中途半端な存在であった居酒屋(洋風・和風を含めて)業態は、外食が産業として発展してきたここ数十年のあいだに、いつの間にか店舗の規模を大型化し、学生のコンパや職場での歓送迎会といった、わが国特有の大人数での宴会に対応することで売上を伸ばしてきた。しかし、ここへ来て、こうした多人数での宴会の需要は次第に頭打ちの傾向にある。 不況の影響で企業単位の宴会は大幅に規模が縮小され、回数も減って来ているし、学生など若者の気質が、コンパのような多人数の宴会を好まなくなっているのも事実だ。 そして、その代わりに近年増えているのが、個人的にごく親しい3〜5人程度の小人数のグループで、気の向いたときに気軽に集まって飲食店を利用するというシチュエーションである。 業界の一部では「プチ宴会」などとも呼ばれているこうした小グループ客が増えている背景には、以下のような理由がある。 ●会社よりも個人や家族での生活を大事にする「団塊の世代」が、社会の中心に位置する世代となってきたこと。 ●会社単位での集まりの代わりに、住居地域や趣味のサークル単位での集まり、主婦同士が中心となった外食利用などが活発になっていること。 ●こうした小人数グループの集まりに対応するメニューやサービスを充実させた飲食店が増えており、これまでの居酒屋など以上の満足感を得ることができるようになってきたこと…等々。 ひと言で言えば、飲食店を利用するニーズが、学校のクラスやサークル、職場の部署全体といった大所帯から、家族やごく親しい知人たちなどといった、個人的な小人数グループの単位へと変化しているということなのだ。 そうして、こうした状況から、現在狙うべきお客のターゲットもハッキリと見えてくる。社会環境の変化の中で、この「小グループ客」が次第に重要なマーケットとして脚光を浴びるようになってきているのである。 このページのトップへ |
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■広がる「個室感覚」の飲食空間 こうしたお客の変化に対応して、近年、和食業態を中心に、料理や飲物といった商品の充実だけではなく、店舗デザインや客席レイアウトに工夫を凝らした空間づくりで、小人数グループ客に圧倒的な人気を誇っている飲食店舗が数多く出現している。 独自の店舗空間を持つ和食業態ブームのきっかけを作った「えん」や、カウンター以外はすべて個室という大胆な客席レイアウトで「個室空間」飲食店の代名詞ともなった感がある「忍庭」といった有名店。さらに、そうした流行をいち早く取り入れたチェーンの「月の雫」や「土風炉」など、企業の規模や対象ターゲット、客単価を問わず、飲食空間を重要な要素として売り物にしている大型和食店は、確実にその数を増やしている。 こうしたユニークな「飲食空間」を持つ飲食店に共通する店づくりの特徴は次のようなものだ。 ●店舗面積が大きくても、これまでの居酒屋のようなだだっ広い客席は存在しない。各卓は2人から4〜5人、多くても10人程度で利用することを前提とした、個室感覚のブース席を中心に作られている。 ●店内は平坦なスペースではなく、中二階風のロフト席や段差のある通路など、上下にも広がりのある空間となっている。 ●全体の空間コンセプトは統一されているが、店内の各コーナーは様々なデザインで演出され、リピート客を飽きさせない魅力を打ち出している。 ●客席だけではなく、ビル内店舗であっても中庭や回廊、水路などが設けられた贅沢な空間づくりであり、トイレや待合席の環境などにも独自のこだわりがある。 こうした話題の飲食店の多くは、これまでの居酒屋に比べて客単価が高い。従来の大箱居酒屋がせいぜい2,500円前後の客単価であったのに比べて、こうした店舗では1,000円以上も客単価が高いのが普通だが、どの店も平日から予約で一杯だ。 しかし、これらの店のお客を、かつてのバブリーな時代のお客たちと混同してはいけない。財布の中の「余裕」を外食にまわしていた時代とは根本的に違い、現在のお客は、例えば「3回の外食を2回に減らす代わりに、自分が本当に満足のいく飲食店にシッカリとお金を使おう」という意識で店を評価しているのである。 |
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■ニーズを読み時流を捉える店づくり 限られた予算の中で、より満足のいく「外食の楽しみ」を求めるお客が店を選ぶ基準は日増しに厳しくなって来ている。 会社単位での儀礼的な宴会ならば、「そこそこ」の店でもガマンできるかも知れないが、自分の財布から支出する外食費の使い道は、ベストの選択でなければならない。インターネット上では、そんなお客たちが自分の価値感で選んだ「食の情報」が日夜飛び交っている。 また、こうした小人数グループに対応した空間づくりの傾向は、決して都心のお洒落なトレンド系飲食店だけの流行ではない。郊外や駅ビルなどで主婦層を集めて話題のチェーン「梅の花」や、町田という立地で独特の店づくりと料理で人気を博している「隠れ房」、洋食店からの低投資リニューアル店舗でありながら若者にも勤め人にも好評のアジアン中華「まんじゅうや」など、「個室空間」の魅力を打ち出してお客を呼んでいる店舗は幅広く存在している。 さらに和食店だけにとどまらず、こうしたスタイルは洋食など他の業種の店づくりにも影響を及ぼし始めているのである。 海外旅行なども含めて、様々な飲食体験を持つ現代のお客の満足を得るためには、商品レベルや接客サービスの充実はもちろんのこと、それに見合った店舗空間の雰囲気や機能の充実が重要なカギを握っていると言える。 それは、ただ個室風の客席を備えれば良いということではない。例えば、いまだにあまり気に留めていない経営者も多いが、こうした店では店内で携帯電話が使えるかどうかも重要な要素となる。なぜならば、こうした「小人数グループ」のお客の多くは、当日にケータイやメールで連絡を取り合いながら店に集合するといった利用のしかたをするからだ。 お客の立場になって飲食ニーズを的確にとらえ、必要な機能や求められている雰囲気を正しく店づくりに反映させるノウハウと、そうした飲食空間の中でリーズナブルな商品を提供できる運営能力の両面が、現在の飲食店には求められているのである。 |
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